sweet voice
『夜分遅くに申し訳ありません、藤原です』


『花音ちゃんか、どうしたんだよこんな時間に。


しかも、公衆電話って』


『えーっと、話すと長くなりますが、とりあえず家に入れない事情がありまして』


『今、どこにいんの?』


『駅の南口です』


『わかった、すぐ行くから待ってろ』


プツン、と電話は切れた。


『待ってろ』っていう、荒井さんのシブイ声が耳元から離れない。


体をギュッって締めつけられたような、息苦しいようで、でも心地よい感じ。


でも、どれくらいかかるか言ってなかったし、荒井さんがどこにいるのかも聞かなかった。


来てくれるのは素直に嬉しいし、ありがたいけど、荒井さんに頼っていいんだろうか。


住宅街の駅は、人もまばらで閑散としている。


・・・なんか、不安になってきた。


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