sweet voice
「お待たせ、ビール飲むか?」


「いただきます」


ビールを飲みながら、いろいろ話した。


荒井さんはドライブが趣味で、だからこのご時世なのにマイカーを持ってるとか。


私は彰太と別れて以来、男運に恵まれていないとか。


話せば話すほど、荒井さんの声に酔っている自分に気づいてしまった。


これはマズイ、と冷静になり、


「私、そろそろ寝ます」


と、唐突に宣言した。


荒井さんは、私の顔をジッと見ると、


「おまえ、スッピンでもいけるな」


あの声でつぶやいた。


「な、なに言ってるんですか?」


必死でごまかしつつ立ち上がったら、何もないフローリングでつまずき、よろけてしまった。


本当は『キャッ』ってかわいく言いたかったのに、実際に出てきたのは、


「ギャ!」


っていうヒドイ声だった。


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