sweet voice
「花音さん、今の人って・・・」


「えっと、取引先の人で、この前たまたま懇談会で知り合った人」


「花音さんの、好きな人なんだ」


「ち、違うよ」


「僕のこと、みくびってない?


これでも意外と、人を見る目は備わってると思うんだよね」


「だから、違うってば」


「僕が花音さんを好きで、花音さんは今の人を好きだなんて、少女マンガみたいだね」


「ほんとに、違うんだよ。


実はね、私、去年フラれちゃって、もう年齢的にも失敗できないなあって思ってて。


だから、今は珍しく慎重になってるっていうか」


「じゃあ、僕にもチャンスがあるってことだ」


「・・・そうだね」


「僕と過ごす時間を、もらえるかな」


「うん」


この時点で私は、荒井さんへの気持ちを閉じこめた。


だって、伸二くんとキスしてるところを見られて、それでも荒井さんが私を好きでいてくれるなんて、あり得ないから。


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