sweet voice
決定打がないまま、伸二くんとお店を出た。


外はまだ蒸し暑くて、店内の快適な温度が懐かしくなる。


「花音さん、また誘うから」


「うん、待ってる」


「なんで、僕が今日誘ったか、わかる?」


「さあ・・・」


「花音さんが思ってる以上に、僕は花音さんが好きだから。


なんでもない時に思い出すのは、花音さんだから」


・・・もったいない言葉だ。


伸二くんにとって私は、今まで出会ったことのない人種なんだろう。


珍しいだけなら、そのうち慣れてしまう。


慣れたらきっと、倦怠期みたいになって、終わりを迎えてしまう。


もう、去年みたいな思いはしたくない。


「そっか」


「『そっか』って、なんか他人事じゃない?」


「ごめん、まだ信じられなくて」


「僕のこと、少しでいいから真剣に考えて」


「はい、すみません」


「わかればよろしい」


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