sweet voice
送っていくよ、という伸二くんの言葉に甘えて、アパートまで一緒に帰った。


「じゃあ、またね」


と、駅へ戻る伸二くんを、部屋に誘うべきなのか迷ったけど、結局誘うことはしなかった。


このまま一緒に過ごしていれば、私はきっと伸二くんを好きになるんだろう。


それでいいんだ、と自分に言い聞かせながらシャワーを浴びた。



翌日の土曜日は、朝からひどい雨だった。


昨日の今日で荒井さんと待ち合わせするのも気まずいのに、雨が追い打ちをかけるように私の気持ちにブレーキをかける。


何度もスマホを見るけど、荒井さんからの連絡はない。


荒井さんが気をきかせて、『急用ができた、悪い』とか嘘でもついてくれればいいのに。


グタグダしてるうちに約束の10時が近づいてしまい、傘を持ってアパートを出た。


1階へ降りたら、クラクションの音がした。


何気なく音の方向を見たら、荒井さんの車が停まっていた。


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