sweet voice
車の窓がウィーンと開いて、荒井さんから


「おはよ」


と、低音ボイスで言われた。


「お、おはようございます」


「乗れよ」


「お願いします」


バタン、とドアが閉まったら、もうそこは二人っきりの空間になる。


「あの・・・今日は、もう会わないんだと思ってました」


「なんで?」


「それはその、昨日の今日ですし」


「花音ちゃんがモテるってこと?」


「いえ、そういう意味ではないです」


「公衆の面前でキスされといて?」


「それは、その・・・」


「まあいいよ、今日はこの前泊めたお礼してくれるんだろ?」


「はい、ランチぐらいならごちそうできます」


「花音ちゃん、好き嫌いは?」


「よっぽど変わったものじゃなければ、食べます」


「わかった」


車は優しく走り出して、高速に入った。



< 58 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop