sweet voice
海の近くだけあって、伊勢海老は甘くてプリプリだし、お造りの魚のヒレは動いてるし、生臭さなんて皆無で、久しぶりに体が喜ぶいいものを堪能した。


「うまかっただろ?」


「はい、とっても」


「ちょっとトイレ行ってくる」


荒井さんは、店員さんに何か伝えると、トイレへ向かった。


店員さんは私にお茶を運ぶついでに、


「あいつが女の子連れてくるとはね」


と、ニコニコしながら言った。


「あいつ、って荒井さんのことですか?」


「そう、俺たち学生の時この海でバイトしてて、それからの付き合いなんだよ。


あいつ硬派でさ、モテるのにあんまり本命の彼女とかつくらなかったから、本命できたら店に連れてこいよって話してたんだ」


「本命じゃないと思いますよ、先日無理に泊めてもらったので、そのお礼にランチをごちそうすることになっただけですから」


「もう会計すんでるけど?」


「ええっ?」


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