sweet voice
「また、そんな冗談言わないでください」


「ひでーな、俺は本気なのに」


荒井さんの声が、私の気持ちを揺さぶっていく。


「だって、昨日のことがあるから・・・」


「まあ、ライバルがいる方が燃えるし?


それに、俺の方が先にキスしたし」


・・・その声で、子どもみたいなこと言わないでよ。


どうしたらいいのか、わからなくなるよ。


「もう冷えただろうから、戻るぞ」


何事もなかったように、荒井さんは運転席へ座った。


私は、密室になるのが少し怖かった。


これ以上、荒井さんのことを好きになったらダメだ。


窓から景色を見ているふりをして、視線を外した。


しばらくしたら、眠ったふりをした。


信号か何かで停まったとき、


「おい、寝たのか」


荒井さんがのぞきこんできた。


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