sweet voice
店員さんは他にも勧めたそうだったけど、


「トップスはあるので、これだけで」


伸二くんは、きっちり断っていた。


お店を出て、カフェでお茶して、夕飯はどうしようってお互い口には出さないけど思っていた頃、


「花音さんちで、また家飲みしてもいい?」


伸二くんに頼まれた。


見下ろされてるけど、甘えられてる状況に母性本能がくすぐられ、


「いいよ」


って答えてしまった。


手をつないだまま電車に乗り、うちの最寄り駅が近づいてきた頃、私たちが立っていた側の扉が開いた。


「よお」


「えっ・・・」


目があった荒井さんが、声をかけてきたんだ。


「なんだお前ら、結局つきあうことになったんだな」


荒井さんの言葉には、どこかトゲがあった。


「荒井さんにいちいちご報告しないといけないんですか?」


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