sweet voice
会社を出てからすぐの脇道に入り、荒井さんの電話番号をスマホに表示させた。


どうせ、出るわけないし。


電話した、っていう痕跡を残せば、彰太も納得するだろうし。


ところが、荒井さんは予想に反して、2コールで出てしまった。


『もしもし?』


『あっ、えっと、その・・・ふ、藤原です』


『わかってるけど?』


『あの、そ、そうですよね、すみません』


『なに動揺してんだよ』


『えっ、だって、すぐに出たから・・・』


『当たり前だろ。


で、なんか用か?』


『来週、夜あいてる日はありますか?』


『来週なら、水曜と木曜以外ならあいてるぞ』


『じゃあ、火曜はどうですか?』


『わかった、じゃあ火曜日な』


『じゃあ、また』


『じゃーな』


どうしよう。


約束、しちゃったよ。


伸二くんへの罪悪感でいっぱいになりながら、家路についた。


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