sweet voice
伸二くんと待ち合わせして、外食して、ふたりでうちへ帰って、キスして、抱きあって、ひとつになって、狭いベッドで眠りについても。


頭の片隅に、荒井さんの顔や声がちらついていた。


どうしちゃったんだろう、私。


罪悪感がそうさせているのか、荒井さんのことが気になっているのか、訳がわからない。


寝息をたてている伸二くんの隣で、涙がにじんだ。


こんなに優しくて、非の打ち所のない彼氏がいるのに、他の人が気になる自分が恥ずかしくて、でもどうすることもできないから、ただただ悲しかった。


翌朝、伸二くんより先に目覚めた私は、罪滅ぼしのように少し豪華な朝食をつくった。


「花音さん、おはよう」


「おはよう、ごめん起こしちゃった?」


「ううん、ゆっくり眠れたから」


「朝ごはん、すぐ食べる?」


「うん、顔洗ってくる」


擬似結婚生活を過ごしてから、伸二くんと私はそれぞれの予定に向かっていった。


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