sweet voice
街ゆく人たちはみんな、足早に歩いている。


家路に向かう人、カップルで歩く人、女同士で笑いながらはしゃぐグループ。


私は今は一人だけど、もうすぐ荒井さんが来てくれると思うと、少しホッとする。


「よお」


後ろから、声をかけられた。


振り返ると、スーツを着た荒井さんが立っていた。


「今日はありがとうございます」


「花音ちゃんから誘うってことは、なんかあったんだろ」


「それがですね・・・」


「店で聞くよ、俺腹減ってるしビール飲みたい」


荒井さんは、私の右手を握ると歩き出した。


「もしかして、店どっか予約した?」


「いえ、してないです」


「じゃあ、花音ちゃんが1軒目で、俺が2軒目担当」


「えっ、はい、じゃあこの次の信号を左で」


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