sweet voice
「じゃあ、2軒目で花音ちゃんをオトすか」


荒井さんは伝票を持って立ち上がった。


「私が誘ったんですから、半分払います」


「いいよ、俺の気持ちをぶつけられたし」


店を出たら、また私の右手を握った。


「あの、どうして手をつなぐんですか?」


「どっかいっちゃう気がして、なーんて」


「ですから、それも理由になってないですけど」


「俺が花音ちゃんを好きだからに決まってんだろ」


その声でそんな甘いセリフ言われたら、胸の奥をギュッってつかまれたみたいになっちゃうじゃん。


「なあ、手を振りほどかないってことは、俺も少しは脈ありってこと?」


「じゃあ離します」


本気で力を入れて、手を引き抜こうとしたら、


「離すわけねーだろ」


いわゆる『恋人つなぎ』になってしまった。


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