優等生と副番長
学校が終わって、塾に向かう途中、廊下で見慣れた背中が見えた。
「恵さんっ!」
気付いたら、大きな声で呼んでいた。
ゆっくりと、恵さんが振り返る。
「よぉ。立山。」
例え、苗字でも名前を呼んでくれたのは、嬉しかった。
「今朝振り。」
恵さんはそうつけ足した。
「はい。」
僕は胸を弾ませて頷いた。
「お。何だ?何か嬉しいことでも、あった訳?」
と、恵さんは不思議そうに聞いてきた。
そりゃ、恵さんに会えたから。なんて、口が裂けても言えない気がしてきた。
「そんなに、嬉しいこともないです…。今日塾だし。」
と、下手な演技をして返事をした。
「そうか。仕方ないな。多分お前の性格じゃ、塾やめたいなんて言えないもんな。」
恵さんは、少し僕をからかった様子で言った。