晴れのち曇り ときどき溺愛
 お見合いの日、私はホテルのロビーのトイレに居た。


 トイレの一室で怜奈から渡された袋の中を覗くとシンプルな水色のワンピースにオフホワイトのカーディガンが入っていた。形はシンプルだけど、肌触りは抜群にいいし、上品な雰囲気がある。似合うかと不安にはなるが今日は少し背伸びが必要だった。


 代理とはいえ、実際の玲奈とかけ離れた雰囲気は困る。

 玲奈は綺麗という言葉が当てはまる女の子だから、代理の私が背伸びは必要だった。相手には私が五条玲奈の身代わりと悟らせてはいけない。五条玲奈が断ることがこのミッション。

「上手く出来るといいけど心配」


 待ち合わせはラグジュアリーなホテルのロビーで、私の水色のワンピースを目印にお見合い相手の進藤さんから声を掛けてくれることになっている。お互いに付き添いはなく連絡先の交換もしていないので私から連絡の取る方法はない。相手が来なかったら来なかったでいいと思うし、来たら来たで断るだけ。


『来ないといいな』


 そんな願望が心の中に響いていた。


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