晴れのち曇り ときどき溺愛
 狭いトイレでもスムーズに着替えられたし、着ていた服を紙袋に入れコインロッカーに格納終了。後はお見合い相手が来るのを待つだけだった。準備が終わった私はソファに座り、玲奈にメールを打った。

『ホテルについて待ってる』

 すると玲奈からすぐに返信があり…。


『本当に助かる。ありがとう。今から行ってくる』


 メールを打ち終わって周りを見渡すと豪華なソファ並び、見上げると眩いシャンデリアが見える。場違いだと自分が一番よく分かっていた。このホテルは名前は知っているものの豪華過ぎて、ランチですら足を踏み入れたことはない。こんな場所でお見合いをする進藤隆二という人はどんな人なのだろう。生理的に受け付けないような人で、『仕事が終わってきたけど、体調が悪い』と言って帰れたら、玲奈にとっても面目が立つと思う。


「五条玲奈さんですか?」

 ゾクッと背中が痺れるような甘い声だった。


 声を掛けてきたのはスーツを着た男の人だけどイメージが違う。どこかの大きな会社の営業と聞いていたけど会社員には見えなかった。

 ブルーブラックのシンプルな細身のスーツに細身のネクタイ。髪はライトブラウンに染められていて、長め。そして耳にはピアスホールらしきものまである。二重だけど意思の強そうな瞳にクッキリとした眉。鼻筋は綺麗に通っていて、薄い唇は微笑みを浮かべていた。

< 11 / 361 >

この作品をシェア

pagetop