晴れのち曇り ときどき溺愛
 テーブルに届いたハーフサイズのタルトは魅力は失ってなかった。

「これが梨佳ちゃんの分だよ。これくらいも無理?」

「このサイズなら食べられそうです」

「よかった。俺も遠慮なく食べようっと」

 甘さを抑えたフルーツタルトはカプチーノの苦みと絶妙な味わいを醸し出す。疲れている時に甘いものが欲しくなるというが、一口食べたら、『ああ、これが欲しかった』と思った。タルト地の中にはカスタードクリームと生クリームが入っていて、その上には零れ落ちそうなくらいのフルーツが乗っている。


「マジ美味い。女の子お勧めのスイーツってヤバい。フルーツのジューシーさはいくつでも食べれそう。ホールでもいけそう」

「甘いの好きなんですね」

「あ、俺。甘党なんだ。これは想像以上に癖になりそうに美味い。これなら、俺、一人でも通う」


 斉藤さんは一個のタルトをペロリと食べ、私に分けてくれた残りの半分にもフォークを刺した。本当に一個半は軽く胃の中に入っていくようだった。一人でも通うっていうけど、この可愛らしいルックスだからきっと彼女は居るはず。一人で通うことはないだろう。


「一人でですか?」

「うん。俺は食べたい時に食べる人だから」


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