晴れのち曇り ときどき溺愛
 斉藤さんは仕事の話はなく友達に話すように映画の事や音楽のことを話している。そんな話を聞きながら私は笑ってばかりだった。


「そろそろ行こうか。それとも真打は最後に登場?」

「先に行っていた方が気が楽です。緊張しますし」


 今から歩いて移動すると丁度いい時間だった。流石に皆が集まった後に最後に入るという鉄の心臓は持ち合わせていない。出来れば、誰も来る前に店に入って端で待つくらいがいい。そんな私の気持ちを察したのか、斉藤さんはクスクス笑った。


「緊張しないでいいよ。俺も横にいるし、席は出来れば室長の横はお勧めできない。あの人の近くに行くとみんな恋をしてしまうから」

「え?」

「抜群に整った涼やかなルックスだけでも脅威なのに仕事は出来るし、男気溢れる性格は逞しいし、思いやりもあるとなると男の俺でも惚れそうだもん」

「そうなんですか?」

 可愛らしさを持っている斉藤さんと端正で涼やかな下坂さんは一定の趣味を持つ女の子には好まれそう。イケナイ想像をしてしまいそうになる。

「そんなにマジで取らないでよ。俺、男の人を好きになる趣味ないし。さ、行こうか」
< 115 / 361 >

この作品をシェア

pagetop