晴れのち曇り ときどき溺愛
 実際に注いで貰うと細かな泡の層がグラスに被さる。泡とビールの割合も黄金律で自分で得意と言うだけあった。下坂さんは私だけでなく井上さんや見城さんにも注いでいる。


 下坂さんに注いで貰ったビールの美味しさを知っているみたいで、それが当たり前という感じでグラスがどんどん下坂さんの前に出される。そして、そこに私のグラスと同じように綺麗な泡を並べていく。下坂さんはニッコリと笑ってゆっくりと言葉を発したのはテーブルの上のグラスが全部ビールで満たされてからだった。


「今から諸住さんの歓迎会を始めます。まずは挨拶と言いたいところだけど斉藤がビールを飲みたくて仕方なさそうだから、先に乾杯しよう。挨拶は個人的にするように。では。乾杯」


 下坂さんの乾杯で始まった歓迎会は一気にビールを飲み干してから始まった。歓迎会と言っても別に私が気を使われるわけではなく挨拶をさせられるわけでもなく。思い思いにその時間を楽しんでいた。

 次々に運ばれてくる料理はどれも美味しいし、横に座っている斉藤さんの話が面白い。さっき、一緒にカフェでコーヒーを飲んだからか緊張もせずに斉藤さんの話に笑ってばかりだった。


 次第に歓迎会から普通の飲み会に変わっていくのは決まりきった流れだったのかもしれない。でも、歓迎会と畏増られるよりもずっと良かった。」

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