晴れのち曇り ときどき溺愛
 急に恨んでいるかとか言われて『はい、恨んでます』と言える訳がない。でも、琉生と同じ部署だったら、今も営業として働けたかもしれないと思う気持ちはあった。今のように耳慣れない専門用語で苦労することもなかったろうし、遣り甲斐という面では今とは全く違ったと思う。


 新入社員の時、必死な思いで仕事を覚え、自分の中で達成感を得られるようになった今になって振り出しに戻ったような気がしている。でも、だからと言って恨んでいるというのも違う。会社が決めたことに対して、下坂さんに恨みを持つというのは筋違いだし、配属されたからには出来るだけ頑張りたいとも思う。

 
 あの専門用語を覚えられてもそれを上手く活用しながらのプレゼンなんていつのなるのだろうとは思うけど…。


「混乱はしてます。前の同じような営業の部署だったら、慣れないながらも働けたかもしれないと思うし。恨んでいると言うよりはこの先やっていけるのだろうかと心配にはなります。専門用語も分からないし。不安もあります」


 下坂さんは静かにお酒を飲みながら私の話を聞いていた。一気に話切った私を穏やかに見つめていた。


 
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