晴れのち曇り ときどき溺愛
 歓迎会はゆっくりとした雰囲気のまま時間が過ぎていく。目の前では井上さんと見城さんとが何故か釣りの話で盛り上がり、その合間に斉藤さんが空いたグラスを下げ、新しく頼んだお酒を配って回っている。下坂さんは井上さんたちの話に入る時もあれば私と話もする。


 少しだけ仕事の話をしたけど、仕事の話はそれだけで後は本当に普通の友達との会話をしているようだった。ただ、女の子同士での会話と違うのは、目の前で繰り広げられる釣り談義やパソコンの性能の話、スポーツの話があったかと思うと、急に株価の話と普段は聞けない話ばかりをしている。


「梨佳ちゃん。飲んでる?何か頼もうか?お酒以外のデザートでも頼もうか」

「斉藤さんって手際がいいですね。グラスとかサラッと片付けて、すみません、本当は新入りの私がしないといけないのに」

「俺さ、大学の時に四年間居酒屋でのバイトしてた。テーブルの上に空いたグラスがあると片付けたくなる性分で、本当は空いた皿も下げて、テーブルも拭きたい気分。だから、気にしないで。さ、何を頼む?」


 さっきまで熱烈な釣り談義をしていた斉藤さんは空いたグラスを片付けながらメニュー表を持って私と下坂さんの間に入ってくる。何の話をしたらいいのか分からなかった私には斉藤さんが救いの天使に見えた。
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