晴れのち曇り ときどき溺愛
「諸住さん。デザートが食べられるのだったら、斉藤に付き合ってやって。いつも一人でデザートを食べるのは味気ないって言って見城や俺に言うけど甘いのは苦手なんだ。酒なら飲めるけど」


 下坂さんはお酒の入ったグラスに口を付けながらクスクスと笑っている。このメニューに載っているデザートは無理にしても、その下のデザートプレートくらいは食べられると思う。でも、シャーベットもあるのに、別にデザートを頼むのは躊躇われる。


『今日はやめときます』そう言おうと思った瞬間だった。口を開き掛けたのを遮るように声を出したのは釣り談義中の見城さんだった。真横で話を聞いていたのかと思うほどの絶妙なタイミングで私の言葉を遮った。


「諸住さん。お祝いに室長が奢ってくれるよ。一番高いの食べたら?デザートは別腹でしょ」

「室長。俺のは」

「二人とも俺の奢りでいい。好きな物食べていい」


 目の前でキラキラと目を輝かせている斉藤さん。斉藤さんに付き合っていやれと言う下坂さん。そして、ついさっきまで魚拓の話をしていた見城さんまでがデザートを食べるのを進めてくる。そして、最後の極めつけは井上さんだった。


「諸住さん。食べれなかったら残せばいいし。でも、全く入らないなら遠慮しないで断っていいよ」

「えっと、じゃ。あの…これをお願いします」


 断るという選択肢はなかった。


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