晴れのち曇り ときどき溺愛
「斉藤は相変わらず面白いな。まだ電車の時間はあると思うけど、住んでいるマンションまでタクシーで送ろうかと思うけどいい?」


 時間は11時を過ぎたくらいだった。下坂さんの言うとおり十分に電車もある。この店から最寄りの駅から徒歩ですぐだしタクシーで送って貰うほどのことでもなかった。それに、タクシーの後部座席に下坂さんと並んで座るなんて無理だった。


「駅まですぐですし、最寄の駅からマンションまでも歩いてすぐなので自分で帰ります。私は一人で大丈夫ですので、先に帰られてください」

「俺と一緒は嫌?」


 嫌と言うよりはどうしていいか分からなくなる。一緒にいると、なんでこんなに惹かれるのかわからないけど、どうしようもなかった。


 今、私は確実に酔っている。

 下坂さんはお見合いの相手ではなく、今は直属の上司に当たる。そんな下坂さんにぽろっとでも自分の気持ちを悟られたくなかった。


「そうではなくて、あの、本当に大丈夫です」

「こんな夜に女の人を一人で歩かせるのは心配だから送る」

「大丈夫です。俺が梨佳を送りますので」


 後ろから声がして振り向くと、シャツにジーンズというカジュアルな姿の琉生が私を見て笑っていた。
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