晴れのち曇り ときどき溺愛
 琉生のことを下坂さんはどう思っているのだろうか。ただ一番最初に会った時、玲奈の身代わりのお見合いで会った時に似ている気がする。最初はとっても他人行儀で人の反応を見るかのように小汚いラーメン屋に私を連れて行った。その時に似ている。


「以前に取引先との会食に使った居酒屋で会いましたよね。私は営業部システム課の室長をしている下坂春臣です。今はシステム課で一緒に働いていて、今日は諸住さんの歓迎会でした。川添さんは今日は約束でもしていたのですか?」

「歓迎会があるとは聞いていましたので終わったら会う約束をしていました。一緒に仕事をしていた同期ですので、新しい部署でどうしているか聞きたくて。それに今日は別に友達も呼んでます」


「では、川添さんに諸住さんのことをお願いします。諸住さん。また明日」

「お疲れ様でした」


 下坂さんは琉生にも軽く会釈してから駅の方に向かって歩いて行く。そんな後ろ姿を見ていると、また胸の奥がキュッとなる気がした。

「気になるか?あの男が」

 その声は静かに吐き出すような小さな掠れた声だった。


「何を言っているの?上司よ」

「上司と言っても、あいつは…いや。それはいい。あのさ、梨佳。遅くなったらマンションまでタクシーで送るから、今日は遅いけど飲みに付き合え。今日は拳も呼んでいる」

「拳もこの時間から飲んでいるの?だから、琉生は私服なの?」




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