晴れのち曇り ときどき溺愛
「仕事ってどんな仕事?」

「俺一人なら絶対に断っていたと思う。でも、今は一緒に働いている従業員のためにも、会社のためにも請けた方がいいのは分かっているんだ」

「そんなに拳が躊躇する仕事って?」

「S&Sコーポレーションの新規事業のデザイン業務。まさか自分が元働いていた会社が合併した先からオファーが来るとは思わなかった。一部外注するらしく、その部分が俺の会社に来た。正直、提示された金額も申し分ないし、自分の仕事を認められるのは嬉しい。でも、躊躇する気持ちもある」


 自分が辞めた会社から、仕事の依頼が来るということはそれだけの拳の会社の実績があり実力があるということ。でも、会社の規模や力関係を考えると、きっと拳の思うとおりの仕事が出来るとは思えない。


「琉生はどう思うの?」

「会社経営者ならばこの話は請けるべきだと思う。条件もいいし、色々な意味で会社にはいいことばかりだろう。でも、仕事の内容を聞くと拳のやりたい仕事とは違う気がする。梨佳はどう思う?」


 私は琉生に言われて、この二日間のことを思い出した。私も自分のやりたい仕事とは違うことばかりをしている。
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