晴れのち曇り ときどき溺愛
「そんなに焦らなくても大丈夫。室長もいきなり諸住さんに説明をさせたりしないよ。まずは慣れるために一緒に同行して営業の仕事がどんなものなのかを知って貰ってからじゃないとね。それにうちの課は女の子を一人で営業には行かせないから、室長か見城。または俺が絶対に付き添う。

 誰かが傍に居る分、安心でしょ。最近まで斉藤も同じだったしそうやって成長してきた。これはオフレコだけど、斉藤よりも諸住さんの方が筋がいい」


 私の焦る気持ちを井上さんは分かってくれているのか、自分の仕事をしながら世間話をするように話し出した。手は高速に動くわけでもなく、コーヒーを飲みながら優雅にサラリと仕事をこなしている。それでも私の仕事の流れを見ながら適切に教えてくれている。


「でも不安です」


 私の方が斉藤さんより筋がいいというのは盛りすぎ。私は一か月経っても徐々にしか仕事が出来ない。それに比べ、斉藤さんはニコニコしながらも確実に仕事をしている。とっても人懐っこい人でこの課では明るいムードメーカーな部分が大きいのに、仕事は遜色なく出来るのだから出来過ぎだと羨ましくなることがある。


 見城さんは遥か上を行っているので目標にはまだ出来ないけど、年も二つ年上という斉藤さんは頑張って目指したい目標でもあった。

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