晴れのち曇り ときどき溺愛

　下坂さんは奥の会議室で仕事をしている。客先に行く前は全ての資料を綺麗に机に並べ、内容と不備がないかを確認するのが下坂さんの仕事のやり方。ドアをノックをして会議室に入ると、豪華なソファに深く腰掛けた下坂さんの手には分厚い資料があって、テーブルにはいくつもの資料の束が置いてあった。

　
　いつもはパソコンとタブレットで仕事をしているのに、こういう時は毎回資料の束に目を通して確認を怠らない。


「お疲れ様です。明日の事ですが」

「ああ。もうこんな時間か」


　下坂さんは部屋の時計を見て少し目を見開いた。自分が思っていたよりも時間が過ぎていたのかもしれない。持っていた資料を束をテーブルに置くと、少し首を左右に動かしてから、私の方を見つめた。


「明日は客先に行くので一応スーツに華美ではない靴を履いてきて。名刺は多めに準備して、それと、昼食は早めに終わらせておいて貰いたい。それくらいかな」

「あの、スーツとかは分かりましたが、明日はどこに行くのでしょうか？」


「今までの既存の取引先でかなりの大口だから基本的には私が担当している。他の顧客も増えているので何かあった時に対応して貰えるように諸住さんを紹介に連れて行く。最初はアシスタントとして連れていくがそのうち任せれればと思う」