晴れのち曇り ときどき溺愛
 既存先でしかも大口。『営業補佐』は単なる営業補佐ではないと確かに言っていたけど、まさか初めての同行が顔つなぎとは思わなかった。


「まだ何も分からないのですが、それでもいいのでしょうか?」

「この一か月、井上から十分に習っているだろ。井上からも客先に連れて行っても大丈夫という報告も、諸住さんは営業の場に居たからか飲み込みも早いというお墨付きも貰っている。だから、客先に連れて行くことにした」


 井上さんはニコニコしながら大丈夫と言っていたけど、私を『同行』に勧めたのは井上さん本人だった。井上さんはどこをどう見て大丈夫だとお墨付きを出したのだろうか?


「井上さんの勘違いじゃないですか?私…。そんなに飲みこみもよくないと思います」

「そこに諸住さんの判断は必要ない。ビジネスの場では結果が全てだし、俺は井上の判断を信じている。とりあえず行ってみて、無理だと思ったら、それ以上無理は言わない。取り合えず明日は何も考えずに行くだけでいい」


「はい」

「そんなに緊張しないでいい。俺も居るだろ。明日は普段通りの諸住さんでいてくれたらいいから」

「不安です」

「困ったことが起きたら全部俺が責任を持つ」
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