晴れのち曇り ときどき溺愛
 店のドアを開けると会社帰りの女の子がたくさんいて、みんな楽しそうだった。

 店内を見回すとカウンターが空いていた。テーブル席は空いていたけど予約席の札がある。カウンター席に予約が入ってないといいけどと思いつつ待っていると大学生のバイトと思われる男のウェイターがニッコリと笑いかけてきた。真っ白なアイロンの効いたシャツに黒のぴったりとしたボトム。ギャルソンエプロンをした姿はスラリと洗練されていて爽やかな人だった。


「お一人様ですか?」

「はい。予約はしてませんが、空いてますか?」

「カウンターでよろしければ空いてます。テーブル席は予約が入ってまして」

「一人なのでカウンターで大丈夫です」

「畏まりました。ではこちらにどうぞ」

 私がカウンターに座ると温かいおしぼりが渡され、ドリンクメニューが手渡された。


「ビールをお願いします」


 今はこの店の雰囲気を楽しむかのように気取ってワインを飲むよりもシュワっとした爽快感が欲しかった。


 カウンターの白いコースターの上に置かれたのはうっすらと白く曇る上品なビールグラスに入れられた琥珀色、炭酸で出来た絹のように滑らかな泡がぴったりとその液体の表面を覆っていた。爽やかさと冷たさ、そして、渇きを癒していく。一気に飲み干したい気分になりながら、グラスの三分の一くらいは喉の奥に流し込んだのだった。


 
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