晴れのち曇り ときどき溺愛
 断るはずのお見合いの席でお酒を飲むってことの意味を考えてしまう。どうしようか迷っていると進藤さんはクスクスと笑い、ワインをグラスではなくボトルで頼んだ。勿論、ワインはグラス二個と一緒にテーブルに運ばれた。


「私は自分一人でも一本くらいのワインは飲めます。私は飲みますが玲奈さんのグラスに少しだけのワインを入れるので乾杯だけ付き合って貰っていいですか?ワインの味は楽しみたいと思ったら、舐めてみるのもいいと思います。かなり美味しいと思います。このワインもおすすめです」


 そんなことを言われると気になってしまう。


「では、ちょっとだけ」

 
 私の興味が緊張を越えた瞬間だったかもしれない。私がそういうと、進藤さんは私のグラスの三分の一くらいの所までワインを注いでくれて、私が代わりに注ごうとすると、それを止めた。


「お気持ちだけいただきます。私は手酌で十分楽しめますから」


 そう言うと進藤さんは自分のグラスに注ぐと私の方に差し出した。グラスの中でワインが揺れガラスの共鳴が聞こえるとベルベットのような艶やかな声を響かせた。


「玲奈さんの健康に乾杯」

「え?」

「今日は断れない義理で来られたのでしょう。実は私も仕事の関係でここに来ました。怜奈さんと一緒にいると楽しいのでこのまま一緒に食事とお酒を楽しもうと思いますが、どうですか?」

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