晴れのち曇り ときどき溺愛
「進藤さんってそんなにに綺麗な人なの?」

「俺も遠目でしか見たことはないけど、スタイルもいいし、顔も可愛い系の美人だと思う。でもさ、俺、個人的には梨佳ちゃんの方が可愛いと思うよ」

「私は普通だと思いますが…」

「顔は可愛いと思う。性格も優しいし、仕事も一生懸命頑張るからいい。俺に彼女が居なかったら、梨佳ちゃんに付き合おうって言っていたかも。でもさ、俺、今の彼女のことが好き過ぎてどうしようもないんだ。あのさ、女の子って何も貰ったら喜ぶの?物とかを欲しがらない子なんだよ。あんまり笑わない子なんだけど、一緒にいると俺が幸せな気持ちになる」


 斉藤さんは話の筋から離れているのに気付いてないようで、いきなり自分の彼女の話しをしだした。話の展開に驚きはするけど私にとっては助かる。下坂さんの婚約者の話はしたくなかった。


「彼女の欲しいものをプレゼントするのがいいとは思いますが、物を欲しがらない人なら物ではないものをプレゼントしたらいかがですか?」

「物ではないものって?」


 自分で言っていて墓穴を掘っている気がする。恋愛経験も豊富ではないのに何をどう助言できるというのだろう。私が幸せと思うことはなんだろう。ちょっと考えてみて思ったのは…。


「ただ傍にいるとか」

「傍にいるだけ?」

「私は自分が好きな人の傍に居れたら幸せです」


 殆ど私の願望だった。ただ、傍に居たい。それだけ…。


「確かに俺も幸せかも、彼女の傍に居るだけで幸せ」


 そう言って笑った斉藤さんを少しだけ羨ましく思った。
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