晴れのち曇り ときどき溺愛
 下坂さんが言うとおり、進藤さんの指導のことを考えたら席は変わった方がいいし、これからは見城さんと一緒に実際に取引先を回り、自分の仕事を固めていく時期なのだろうから、席は見城さんの隣が仕事がしやすいだろう。でも割り切れないものがあった。


「進藤さん。この課の紹介をします。私の右から、斉藤、見城。そして、その前が井上さん。私の左が諸住さん。進藤さんは井上さんの指導の下、基本事項を早く覚えて得意先の訪問もして貰いたいと思っています」


「皆様、よろしくお願いします。それと諸住さん。席を移動させてしまって本当に申し訳ございません」

「大丈夫です。荷物の整理に一時間くらいかかりますがいいですか?」

「もちろんです。あの、その間にお茶を淹れてもよろしいでしょうか?」

「じゃ、斉藤が個人のカップを教えてやってくれ」


 私はこの席に座って数か月。でも、そんなに荷物を持ってないと思っていたけどそうではなかった。書類の入った箱と文房具。それに自分で作ったファイルなどだけだと思っていたけど、それ以外にも物は増えていた。段ボールに入れるほどではないけど、何回も机の間を移動しないといけなかった。


 斉藤さんに教えて貰ったのか、お盆の上に見慣れた人数分のカップ。それとは別に見たことのない白地に小花を散らしたカップも乗っている。これが多分、進藤さんのものなんだろう。


「春くんはブラックね」

< 166 / 361 >

この作品をシェア

pagetop