晴れのち曇り ときどき溺愛
 進藤さんの口から零れた言葉は幼馴染の親しさを感じさせる。

『春くん』


 そう進藤さんはそう下坂さんのことを普段から呼んでいるのだろう。その呼び方に一瞬の澱みも躊躇いもなかった。でも、下坂さんは少し怖い顔をして進藤さんを見つめた。


「ここでは下坂というか室長というかどちらかで」

「ごめんなさい。大変失礼いたしました。下坂室長。コーヒーをどうぞ」

「ありがとう」


 進藤さんは井上さん、見城さん、斉藤さんの順にカップを配って回り、最後に私の机の所にくると、カップを机の端の邪魔にならないところにおいてくれた。見上げると綺麗な顔に微笑みを浮かべているのだから最強だと思ってしまう。綺麗な顔だけでなく抜群のスタイル。それに加えて、この微笑みは同じ女性として羨んでしまいそうだった。


「諸住さん。これから色々とご迷惑をお掛けするとは思いますが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 下坂さんの幼馴染で婚約者の彼女は第一印象からどこも悪いところはなく、それよりか私は好感を持ってしまった。井上さんの教えてくれることに一生懸命メモを取り、真剣な表情で仕事に向かっている。秘書課からきてどうなのかと思ったけど、仕事の勘はいいみたいなので、すぐに仕事を覚え独り立ちするだろう。


 私は見城さんの隣に座り、資料を広げると、横から見城さんが私の作った資料を覗き込んだ。


「綺麗に纏まっている」
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