晴れのち曇り ときどき溺愛
「諸住さん。何をしてるの?早くいかないと席が無くなる」

「はい」


 私と下坂さんの向かったカフェは会社の入っているビルから数分の所にある店で、チェーン店ではあるものの、広くゆったりとした空間で美味しいコーヒーを飲むことが出来るというので、人気がある。それにライトミール系も充実しているので会社員の女性のお客さんは多い。そして、昼時の今は私と同じように仕事から開放された人が溢れていた。殆どの席が埋まっているものの若干、二人が座る席は辛うじて残っている。


「何にする?」

 
 耳元で優しく囁かれる声にドキドキしながらも、必死にメニューを見る。でも、何を選んでいいのか考えるのも緊張してしまった。ただ、サンドを選ぶだけでも緊張する。


「アイスカフェラテと生ハムとクリームチーズのベーグルサンドにしようと思ってます」


 差し出されたメニューを見て、とりあえず目に付いたものを頼むことにした。勿論、好きなもので何度か頼んだことがあるから、失敗もない。



「じゃ、それと、アイスコーヒーとチキンのマスタードサンドを」


 そういうと、下坂さんは自分の財布からお金を取り出すと私が財布を出そうとする間にレジを終わらせてしまった。飲み物だけ先に手渡され、サンド系は後から店員さんが運んでくれるとのことを伝えられると、下坂さんはトレーを持って歩き出していた。
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