晴れのち曇り ときどき溺愛
　下坂さんの親友は進藤商事の進藤隆二さん。彼は私が玲奈の代わりにお見合いするはずの相手だった。その妹さんが進藤絵里菜さん。下坂さんの話を聞きながら、徐々に人間関係が整理されてくるのを感じた。あの身代わりのお見合いでの出会いがこんな風に人間関係を展開していくことになるとはあの時は全く思わなかった。


　下坂さんは御曹司で、その横に立つのは生粋のお嬢様であり、幼馴染の婚約者である進藤さん。パチッと何かのピースが嵌ったような気がした。


「進藤さんはとっても綺麗だと思います。女の私から見ても羨ましいくらいです。お嬢様って感じですよね」

「お嬢様って…。絵里菜はお嬢様という柄じゃないよ。見た目は確かに悪くないけど、中身は俺や隆二と一緒に育ったから、男みたいなサバサバした性格をしている」


　進藤さんの言葉にドキッとした。さっき、進藤さんが不意に『春くん』と言ってしまったように、下坂さんも『絵里菜』と名前で呼んでいる。営業室内を離れると、本当の兄妹のように仲がいいのだろう。


　生まれた時からとなると二十年以上も知っているとなると関係も深い。身分違いの恋に飛び込むほど私は強くなかった。


　彼には完璧と言っていい幼馴染の婚約者がいる。これが事実で、それ以上もそれ以下でもなかった。
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