晴れのち曇り ときどき溺愛
 進藤さんは可愛いだけでなく、仕事も一生懸命。元秘書課ということもあり、進藤さんの淹れるコーヒーはそこらのカフェよりも上手だった。コーヒーメーカーしかなかったこのシステム課も今は進藤さんの私物のポットを使って淹れたコーヒーを飲ませて貰っている。


 紙のフィルターは使わないというこだわりのものが美味しくないわけはない。


 コーヒー豆は皆でお金を出しあって買っているけど、その豆も調達してくるのは進藤さんだった。『自分の好みですみません』と言いながら買ってくるけど味的にはシステム課の舌を唸らせるくらいのもので大満足だった。


 システム課は営業に出る時以外は皆が営業室で仕事をしている。根を詰めた時に必然的にコーヒーの消費が激しくなる。


「カプチーノ用の泡も作りますが、梨佳さんはどうします?」

「私も同じので」

「分かりました。濃いめに淹れたコーヒーで作りますね」

 私と進藤さんがそんな話をしていると、営業に行っていた下坂さんが営業室に戻ってきた。下坂さんは今日もまた難しい表情をしている。

「諸住さん。ちょっといいかな」

 応接室で私がソファに座ると下坂さんは溜め息を零した後に、私の目の前に座る。そして胸元から一通の封筒を差し出した。

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