晴れのち曇り ときどき溺愛
「おめでたいけど、いきなりね。でも、拳は独身主義かと思ってた」


 自分で会社を立ち上げてから拳の周りの状況も変わったのだろう。一緒に働いていたのはずっと昔の事のように感じた。


「実はかなり業績が良くて今度会社の規模を大きくするらしい。付き合っていた彼女と結婚ということになったみたいだ。やっと自信が出来たって」


 拳の妥協しない性格はデザイン系の仕事をするものとしては大事だと思う。どれだけ自分の世界を表現できるかということも大事だし、人に流されることなく自分を貫くというのも難しい。クライアントの言いなりでは自分の目指すものは出来ない。それでいて、自分の会社を導かないといけない。

「いつも自信満々の拳から『自信が出来たら』なんて言葉を聞くとなんか変な気がするね」

「まあ、俺もそれには同感。男にとって結婚ってかなりの勇気がいるもんだよ。その人の人生を背負うつもりじゃないと結婚なんか言い出せないだろ。拳は自分で会社を興したのだから、会社員の俺たちとは違って、不安定な部分もあったと思う。だから、俺さ、マジで拳を凄いって思って」

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