晴れのち曇り ときどき溺愛
 会社が吸収合併された理由は今までは無機質だったシステムにデザイン性を持たせることだった。その中でもシステム課はその一端を担っている。営業課の中でも一際変わっていると思っていたシステム課だけどプロジェクトを請け負うのは下坂さんや見城さんの実力により依頼されている。

 そんな中で新規のプロジェクトに私は参加することが出来た。最近まで営業補佐だった私に出来るだろうかと思うけど、そんなことは言ってられないスピードで会議は進んでいく。


 見城さんは色々と下坂さんに説明を求めていたけど、私は何を質問していいかさえも分からない。井上さんに丁寧に教えて貰ったけど、その基本を遥か高い別次元と思った見城さんとの仕事。でも、下坂さんとの仕事はまた違った意味での別次元だった。


 ミーティングは一時間ぴったりで終わった。下坂さんは時間をダラダラと消費する人ではなかった。拳のお祝いもあるから、私にとっては都合がいいのだけど、あまりにも膨大なミーティングの内容が頭の中がショートしそうになっていた。


「諸住さん。ちょっと残って」


 会議室を出て行こうとした私を引きとめたのは下坂さんだった。そして、さっきの厳しさが嘘のように優しく微笑んでいた。
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