晴れのち曇り ときどき溺愛
　私は帰る準備を始めたけど下坂さんは自分の席に座りパソコンを動かしだした。さっき食事に行くようなことを言っていたけどまだ仕事をするのだろうか。

「仕事ですか？」

「別の案件もあるからね。気にしないでいいから楽しんでおいで。お疲れ様」


　私も残って仕事を…と思ったけど、今日はどうしても行かないといけない。拳からお祝いをしている店のメールは来ているし、遥からも『先に始めるけど早く来てね』というメールも来ている。遥からは別にお祝いを買ったからというメールも来ていたので結婚のお祝いの準備は万端だった。


「すみません。お先に失礼します」

「ああ」


　営業室を出ると後ろ髪を引かれるような気がしたが、私は急いでお祝いをしている店に向かって歩き出した。もしもお祝いの会がなければきっと私は残って仕事をしたと思う。


　拳の予約してくれた店は会社から徒歩でも行ける先だった。ビルの立ち並ぶオフィス街にから駅まで歩く間に色々な店が立ち並んでいる。その中で拳が選んだのはビルの三階にある居酒屋だった。居酒屋と言っていいのかわからないその店は店の前に椅子には何人もの人が座っている。
　
　私はその横をスルリと抜けて店に入り、店員さんに拳の名前を言うと、奥の個室に案内された。ビルの中とは思えないくらいに広い部屋には掘りごたつがあり、既に私を除く全員が揃っていた。


　



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