晴れのち曇り ときどき溺愛
「遅れてゴメン。拳、今日はおめでとう」


 そう言って遥の横の空いている席に座ると、目の前に居る琉生はサッと飲み物をメニューを差し出してくる。テーブルには食べかけの皿が並んでいるけど、私の分は綺麗に取り分けてくれていた。前菜から始まった食事もまだ三分の一くらいのところで私は来ることが出来たみたいだった。


「仕事お疲れ様。忙しかったんだろ。こっちこそありがとな」

「ううん。大丈夫。でも、本当に婚約おめでとう」


 私のビールが届くと、拳だけでなく、遥も琉生もグラスを上げて乾杯をした。一緒の会社に居る時は普段からしていたことが今は約束をして集まらないと会えない。琉生は会社帰りのスーツ姿だったけど、遥は可愛らしいワンピースだし、拳はシャツにズボンというカジュアルな姿。今の服装が今の状況を表している。


「今ね。拳の婚約者にどんな風にプロポーズしたかを聞きだしていたの。琉生の聞き方はまるで尋問なの。いつもは拳に言い負かされるから嬉しそうだったわ」

「琉生も懲りないね。きっと、私たちが知りたい核心には触れられないのに」

「核心も何も。俺が結婚するのは俺の会社の女の子だよ。一緒に居たらいい子だなって思って付き合いだして、結婚しようというごく自然の流れ。あ、梨佳。悪いけど、結婚式の二次会の幹事をお願いしていい?」


「いいよ。琉生から少しだけ聞いているから」


 
< 202 / 361 >

この作品をシェア

pagetop