晴れのち曇り ときどき溺愛
「助かる。琉生と一緒にするなら梨佳の方がいいと思って。店とか色々なことに関しては彼女の意見も聞いてから連絡する」


「彼女って…。何て名前なの?」

「田中静香。年は俺よりも一つ上」


 私が聞くと、拳はサラッとそれだけ答えた。その言い方もスーパーで『キャベツ。群馬県産』っていうのとあまり変わらない。もっと聞きたいのに、拳は上手くベールで隠している。


「拳の好みだから可愛いのは分かってる。写真とかないの?」

「さっき琉生が拳に聞いて上手く躱されたことだよ。梨佳も聞きたがっているし、拳教えてよ」

「真面目でいい子だよ。写メはない。あっても見せない」


 やっぱりあまり話したくないとしか思えない。ちなみに写メはあると思う。


「二次会の幹事をするとなると結婚前に会うだろうからその時を楽しみにしとく。でもさ、結婚に踏み切るって勇気いらないの?相手の人生を背負うってことじゃない?」


「静香は俺に背負われなくても自分で生きていける人だから、俺は一緒に並んで歩くだけ」


 単純に『いいな』って思った。好きな人と一緒に歩くことも、好きな人に背負われなくても自分で生きていけると言われること。私はまだ自分と一緒に歩いてくれる人に出会ってさえいない。


「俺のことはそれくらいでいいけど、さっき琉生から聞いたけど、梨佳はかなり大変なことになっているんだな。大丈夫か?」


 拳の問いにドキッとした。
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