晴れのち曇り ときどき溺愛
「ありがとう。頑張ってみる。でも、困ったことが起きたら皆に相談する」


 私が遅れてきたからとはいえ、既に十一時を回っている。私はいいけど、遥は帰らないといけない時間になっていた。子どもを預けて来ているのにお祝いだからと今日はいつも以上に遅い時間になっている。

「あ、忘れてた。これ、私達からのお祝いね。主婦の目線から見て、拳に必要だと思うものにしたわ」


 そう言って遥は紙袋をテーブルの上に置いた。


「これ、俺に?」

「そう。私が選んだけど、皆から」


 拳はその紙袋からプレゼントを取り出し難しい顔をした。見ただけでは何かが分からなかったみたいだった。頒布のようなしっかりとした黒い生地ではあるけど、箱の中にあるのを見ただけでは何か分からない。箱から取り出し広げてみると二本の同布の紐が付いている。


 遥は珍しくドヤ顔をしていた。


「ギャルソンエプロンよ。今は男も家事をする時代だから頑張ってね。包丁にするか、エプロンにするかって迷ったの」


 お祝いの品を選ぶとして、ワインとかワイングラスとか少し生活から離れたものを送るかと思っていたけど、そうではなかった。遥の選んだものは実用品。


「拳は料理するの?」

 私がそう聞くと、肩を落としながら拳は首を振ったのだった。
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