晴れのち曇り ときどき溺愛
 借りるだけでも申し訳ないというのに貰うなんてありえない。今まで営業課にいたけどこのようなパーティはなかった。それでなくても今回のパーティはハードルが高すぎる。


「ありがとうございます。あの、でも、本当に私でいいのですか?」

「とりあえず一緒に行って、美味しいものを食べて帰ってきてくれたらいい。最初に取引先に挨拶すればいいし。俺も出来るだけ傍にいるつもりだよ。それと急がして悪いけど仕事に入る前に名簿のチェックをするから、皆が来る前に着替えて貰っていい?」


「はい」


 こんなパーティに着て行くドレスを着ているのをみんなに見られるのも恥ずかしい。私は更衣室に入るとドレスを脱ぎ去り、今日着てきたスーツを着るとホッとした。妙に肩が凝ったように感じるのは服に緊張していたからだろう。


 営業室に戻ると見城さんが出社してきていて、更衣室から出てきた私の手にある紙袋を見て納得したような表情を浮かべた。


「諸住さん。会議室にいいかな?名簿を持って来て」

「はい。わかりました」


 先に会議室に入っていった下坂さんの後を追って入ろうとすると、見城さんがニッコリと笑った。


「パーティの名簿の確認が終わったら、プロジェクトのことで話があるからって室長に言っておいてくれる?」

「わかりました」


 
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