晴れのち曇り ときどき溺愛
 会議室に入ると、下坂さんは名簿を捲りながら大きな溜め息を零している。私は下坂さんの目の前に座ると、下坂さんの静かで柔らかな声が聞こえてきた。


「じゃあ、始める。まず一番上の人が…」


 名簿の枚数からするとこれは全部ではなく一部なのだろう。経済界だけでなく法曹界、政界とあらゆる人が集まっている。その顔ぶれを見るだけでただの創立パーティではない気がした。下坂さんは名簿を見ながら、どのような人で役職などを教えてくれる。それを一つ一つ確認した。


 分かったのはやっぱり私は場違いだということだけだった。


「凄い顔ぶれですね」

「本当にお世話になった方のパーティだから出席してお祝いしたいと思っている。周りはとりあえず挨拶するくらいだから気にしないでいい。そんなに心配そうな顔をしないで大丈夫だよ」


 何度も何度も下坂さんは大丈夫と言ってくれるだろうけど不安は次第に足元から上ってくる気がした。でも、仕事の一環だからと自分に言い聞かせた。パーティだけが仕事ではない。一番大事な仕事といえば、今は新規のプロジェクト。初めての大きなプロジェクトだから、下坂さんにも見城さんにも迷惑を掛けないようにしたかった。


「あの、打ち合わせが終わったら見城さんがプロジェクトのことで話があるそうです」

「見城に頼んでいたものがある程度進んだのだろうから報告だろう」
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