晴れのち曇り ときどき溺愛
 エスコートされて入ったドアの向こうはセレブ系のハリウッド映画の中にでも出て来そうな空間だった。

 広がるホールは大理石に床が覆われ、歩くスペースにはフカフカの絨毯が敷いてある。歩くたびにフワフワ感に緊張する。横に立っている下坂さんは平然と前を向いて歩いているけど、私はもう帰りたかった。


 天井から光を降り注がせるシャンデリアはガラスで豪奢で、壁にもシャンデリアと同じブラケットが等間隔に並ぶ。眩い光の溢れる中で綺麗に着飾った女性とその横にいる清廉な男性は楽しそうに談笑していた。私と下坂さんと同じように会社の関係で出席している人も多いはずなのに心から楽しんでいるようにしか見えない。


 会社の創立記念パーティは想像とは違っていた。


 立食形式のパーティは個人に決まった席があるわけではなく、会場にはいくつかの丸テーブルが置かれてある。そしてソファも配置されている。


 ステージから右側には食事のビュッフェが並び、左側にはバーを一軒移設したかのような種類の飲み物が並んでいる。バーテンダーが華麗な技を披露し、そのコーナーを起点としてワインやシャンパンなどの乗った銀色のトレーを持った男の人がスマートに招待客の間を歩いていた。

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