晴れのち曇り ときどき溺愛
 営業課の同期入社は四人いた。営業課は毎年十人程度を採用する。ただ、私が入社した時に限って会社自体が社屋の移転ということもあり同期入社はたった四人だった。入社と並行して、仕事を覚え、それでいて、移転の準備をするという過酷だったけど、半年後には落ち着き、また次年度からは平均的な採用が始まった。

 私たち同期はとても仲が良かった。
 
 一人目は小松崎拳(こまつざきけん)。上昇志向の高い人で、当たりは柔らかいけど、最初に会った時からずっとここには居ないだろうと思わせるような人だった。三年目の春に会社を辞めると宣言してそれを実行。一人でデザイン広告会社を立ち上げ、仕事も軌道に乗り、今では三人の社員を抱えるまでになっている。


 同期の飲み会を企画するのは拳が多い。店をよく知っているし、交渉も上手い。女の子の好きそうな店を探してくるから拳が幹事をしてくれる。


 二人目は伊藤遥(いとうはるか)。おっとりとした遥は私にとっては安らぎのような人で高校時代のからずっと付き合っていた彼と結婚して今は二児の母。出産と同時に退社はしたけど絵を描くのが好きだった遥はその才能を生かし母親をしながら拳の会社の仕事を外注していた。


 そして、会社には私と琉生だけが残っていた。

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