晴れのち曇り ときどき溺愛
 進藤さんも下坂さんもお酒が入っての言葉と何度も自分に言い聞かせているけど、どんな形でも『大事』と思われていることが嬉しかった。


「転職は考えてません。今の仕事を頑張れればいいと思います」


 ハッキリと自分の意見を言うと、進藤さんはクスクスと笑いだした。綺麗な顔に浮かぶ眩さにドキドキはするけど、下坂さんに思う気持ちとは全く違う。


 下坂さんを思うと胸の奥がドキドキしながらもキュッと痛むのだ。どうしようもないくらいに気持ちが上下し、ただ一緒に居るだけで幸せな気持ちになる。でも、それはあのお見合いの日から燻り続ける火の粉が胸の奥にあるだけ。私の気持ちは下坂さんに傾いたままだった。



「残念。でも、ウチの会社は何時でも諸住さんのことをお待ちしてますよ。それと、さっき絵里菜が言ったことは本当ですか?」

「何がですか?」

「恋人がいないってことです。もし本当なら、私と付き合ってみませんか?絵里菜に言われた時は何を言っているんだと思ったけど、諸住さんと話していて気持ちが変わりました」

「だから、俺の部下を口説くな」

「いや。これはプライベートだから。進藤隆二個人として諸住さんに聞いているのだから、春臣は諸住さんのことを思ってないなら、黙っていてくれないか」


 ラグジュアリーなホテルのホールで眩いばかりの光を放つシャンデリアの光りの中で進藤さんは文字通り眩かった。

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