晴れのち曇り ときどき溺愛
「今は仕事を頑張りたいと思っています」


 下坂さんと進藤さん、絵里菜さんと私で話していると、さっきご挨拶をした長田さんもスルリと人の波を避けるようにやってきた。長田さんは下坂さんの横にいる私にも軽く会釈してから話し出したのだった。


「春臣。この間のシステムの件で、俺の取引先が詳しく話を聞きたいと言っている。今から少し説明して貰えるか?チラッと話しただけだから何ともいえないが、導入できるかもしれない」


 長田さんの話は仕事にまつわるものだった。創立記念パーティとは色々な会社の役員級が集まるので新しい仕事の話も来るのだろう。でも長田さんも下坂さんの開発したシステムが使いやすくよかったから紹介したのだと思う。友達であるというのもあるけどそれだけではない。


 下坂さんは私の方をチラッと見て、フッと息を漏らした。


「諸住さん。申し訳ない。今から仕事の話になると思う。少しだけ一人でも大丈夫?」

「俺と絵里菜がいるから大丈夫だよ。春臣が戻って来るまで一緒にいる。気にせず仕事に行って来い」


 私が大丈夫ですと答える前に話し出したのは進藤さんで、その横の絵里菜さんも頷いている。私は正直なところ悩んだ。最初はこのパーティの長田さんだけに挨拶したら帰ろうと言っていたから、私は先に帰りますというつもりだった。


 
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