晴れのち曇り ときどき溺愛
「お兄様。本当に梨佳さんの事を気に入ったみたい。さっきは冗談で言ったけど、私。本当に梨佳さんがお姉さんになってくれたら嬉しいわ。妹の私がいうのも可笑しいけど、お兄様は本当にいい人だと思う。優しいし頭はいいし、顔は好みがあるから何とも言えないけど、兄が不細工と言われたことはないわ。春くんには悪いけどお兄様と付き合ってみない?」


「なんでそこに下坂さんが出てくるの?」

「だって、春くん。梨佳さんのこと好きだと思うの。だから、梨佳さんが春くんを好きになる前にお兄様と一度出掛けてみたらいいと思うのよ」


 絵里菜さんは何を言っているのだろう。どこをどう見たらそうなるのかを教えて欲しい。


「俺が何て?」

「梨佳さんに一度お兄様と一緒にお出かけしてみたらって勧めていたの。だって、お兄様なら美味しいレストランをたくさん知っているでしょ」


 進藤さんは絵里菜さんに視線を向け、溜め息を零した。


「確かにいくつかのお勧めの店はあるけど、今日は春臣と一緒に来ているのに、誘うのはおかしいだろ。すみません。妹が可笑しいことを言いだしてしまって」


「いえ」

「さ、温かいコーヒーを持ってきましたので、少しゆっくりしましょう。足も痛いでしょう」



 確かにそろそろ立っているのも厳しい。慣れない靴はかかとの辺りに擦り傷を作っていて、歩くたびに擦れるし、ただ立っているだけでも少し足首が動く度に痛みを増してくる。でも、そのことに進藤さんが気付いているとは思わなかった。
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