晴れのち曇り ときどき溺愛
 私は昨日の紺色のドレスのままだった。そのまま寝てしまったのでドレスのスカートの部分は皺だらけで、それがとても気になる。皺だらけにしてしまった今、ドレスをクリーニングして出来るだけ綺麗な状況にしてお返しすることしか出来ないと思った。その上、コーヒーでも零してしまった日には目も当てられない。


 とりあえずこのドレスから自分の服に着替えたかった。


「ああ。リビングの方で待たせて貰う。テレビ付けてもいい?」


「はい」


 何でこんなことになってしまったのかと思うけど逃げようのない現実。着替えをしようと腕を伸ばして気が付いた。このドレスの一番上のボタンは一人では外すことが出来ないということ。


 鏡を見ながら自分の腕を最大限、伸ばし一番上のボタンを掴む。ボタンをはめる紐がとっても細くて引き千切ってしまいそうで怖い。


 究極の選択だった。


 下坂さんに頼むか、引き千切れることのリスクを負いながら自分でするか。でも、下坂さんに頼むなんて…恥ずかしすぎるけど破くわけにはいかない。リビングに行くと、ソファに座る下坂さんに声を掛けた。


「あの、すみません。お願いがあるのですが」

「なに?」

「このドレスの一番上のボタンを外して貰えませんか。私には外せなくて」
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